こよひ逢ふひとみなうつくしき

今週のお題「お花見」



桜はどうしてこんなにも
ひしひしと全力で咲くのでしょう。
そんなに懸命だから
木の下に屍体が埋まってゐる、なんて
噂が広まるのです。



春の霞の饗宴に応じ
花はただ
ぱっと咲いては散っていくばかりであります。
圧倒的な美しさには畏怖の念を覚え
終わりを孕んだ刹那の桜に
人々は惑わされ不安を掻き立てられていくのです。


何かが始まれば何かが終わるのです。
ただただ得体の知れない不安ばかりが
増殖していくのです。


「どういう不安だか、なぜ、不安だか、
何が、不安だか、分からぬのです。」

ただひっそりと、そしてひそひそと花が降ります。








千々に乱れるくろ髪を抑え
満開の桜の下を
じっと見つめるも
わたしに虚空なぞ見えるはずもなく。